呼吸機能検査の再開について
滑川健康管理センターにおいて、新型コロナウイルス感染予防のため中止しておりました呼吸機能検査を、令和5年5月8日より再開させて頂きます。
尚、今後も新型コロナウイルス感染症状況、それに伴う政府発表、各自治体の対応等により、再度健診の一部検査を中止することも考えられます。その際には再度ご連絡させて頂きますので、何卒、ご理解ご協力のほどよろしくお願い致します。
滑川健康管理センター
お問い合わせ先:076-475-2254
滑川健康管理センターにおいて、新型コロナウイルス感染予防のため中止しておりました呼吸機能検査を、令和5年5月8日より再開させて頂きます。
尚、今後も新型コロナウイルス感染症状況、それに伴う政府発表、各自治体の対応等により、再度健診の一部検査を中止することも考えられます。その際には再度ご連絡させて頂きますので、何卒、ご理解ご協力のほどよろしくお願い致します。
滑川健康管理センター
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令和5年も新型コロナウイルス感染症が蔓延する中、新年が明けました。
昨年を振り返るとロシアのウクライナ侵攻が起き、日本も大きな影響を受けました。当センターでは、新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、健診控えが続いています。そのため病気の発見が遅れることを危惧しています。昨年、新しい試みとしてFIB-4 indexを採用しました。この指標は、検査を追加することなく算出するものであり、2020年の日本肝臓学会のガイドラインに記載されたものです。このような新しい試みを今後も行っていきたいと思います。また異常ヘモグロビンの症例を2例経験しました。糖尿病の診断・治療に欠かせないHbA1cの結果に影響することからその実態を検討していきたいと考えています。
新型コロナウイルスの「第8波」では、インフルエンザとの同時流行が懸念されています。今年もこれらの感染症に対処しつつ健診を円滑に進めていきたいと思っていますので、皆様にはご協力のほどよろしくお願いいたします。
滑川健康管理センター 所長
山本正和
食道がん(第1回)
「がんの統計21」によると、 2017年に食道がんになった人(罹患数)は、男性21,145人、女性4,338人の計25,483人でした(図1)。
また、食道がんで亡くなった人は、男性9,571人、女性2,048人で計11,619人でした(図2)。
食道がんの年齢階級別罹患率では, 60代~70代がピークで、男性に多いという結果でした(図3)。
食道がんの組織型をみると、わが国では「食道扁平上皮がん」が約90%、次いで「食道腺がん(バレット食道腺がん)」が約4%です。米国では1990年後半に食道腺がんが食道扁平上皮がんを抜いて最も多くなっています。「喫煙」はどちらのがんでも危険因子となりますが、食道扁平上皮がんでは「飲酒(特にアセトアルデヒドへの暴露)」が、腺がんでは「Barrett(バレット)食道」が危険因子として特に重要です(図4)。
食道扁平上皮がんの危険因子
–飲酒とアセトアルデヒドへの暴露–
アルコールは主に「アルコール脱水素酵素(ADHB1)」によってまず「アセトアルデヒド」という物質に分解されます(ほかにも「ミクロソーム・エタノール酸化系(MEOS)や「カタラーゼ酸化酵素系」なども分解しますがメインはアルコール脱水素酵素です)。
アセトアルデヒドは主に「2型アルデヒド脱水素酵素(ALHD2)」によって酢酸へ分解され、最終的に炭酸ガスと水になります(こちらもほかに「1型アルデヒド脱水素酵素(ALDH
1)」も分解しますがメインは2型アルデヒド脱水素酵素です)(図5)。
アセトアルデヒドには強い毒性があり、二日酔いの原因物質で、動物実験では発がん性が証明されています。アセトアルデヒドによって「顔が赤くなる」、「吐き気がする」、「動悸がする」、「眠くなる」などの症状(「フラッシング反応」といいます)が出現します。また、口腔内や消化管内は、常在細菌によりエタノール(アルコール)から高濃度のアセトアルデヒドが作られるため、特に高濃度のアセトアルデヒドに暴露されます。お酒を飲むと顔が赤くなる人は「フラッシャー」といい食道扁平上皮がんのハイリスクです(図6)。
お酒に強いか弱いかは2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)が活性型か否かで決まります。ヒトのALDH2は517個のアミノ酸が連なったタンパク質で、このうち487番目のアミノ酸がグルタミン酸であるものは「N型」といいアセトアルデヒドを分解できますが、リシンであるものは「D型」といいアセトアルデヒドを分解できません。どちらの酵素を生成するかは遺伝によって決まっています。遺伝子は両親から1つづつ受け継ぎますので両親の持っている遺伝子型によって「NN型」「ND型」「DD型」が存在することになります。「NN型」は「活性型」でお酒に強いタイプ、「ND型」は「ヘテロ欠損型」といい「低活性型」でお酒に弱いタイプ、「DD型」は「非活性型」で全くお酒が飲めないタイプ(いわゆる下戸)です。理論上ND型の活性はNN型の1/16(約6%)と言われています(図7)。
フラッシャーかどうかは遺伝子を調べなくても、図8に示した質問紙法である程度わかります。当センターの内視鏡問診票には喫煙や飲酒についての項目があります。食道がんのリスクを把握するためですのでなるべく正確にお答えください。
ただし、アルコール脱水素酵素(ADH1)が低活性の場合はアルコールの分解が遅れるため、アルデヒド脱水素酵素ALDH2ヘテロ欠損の人でも顔が赤くならない場合があり注意が必要です(図9)。
ND型の人でもお酒を飲み続けるとだんだん強くなります(アルコール耐性)が何故でしょう?これには図5で示した「ミクロソーム・エタノール酵素系(MEOS)」が関与しています。MEOSはシトクロムP450というミクロソーム系酵素と言われ、通常睡眠剤や精神安定剤などの薬物代謝を行っていますが、大量飲酒によってアルコールの血中濃度が高くなると、アルコール脱水素酵素(ADHB1)に加勢するような形でアルコール代謝をするようになります。ADHB1は慢性飲酒によって増えることはありませんが、MEOSは長期の大量飲酒によって増えるため、アルコールの耐性が高まるのです。ALDH2ヘテロ欠損の人は、アルコール摂取量が増えるとこのアルコール耐性によってアルコールの分解は進みますが、アセトアルデヒドの分解は変わらないため、よりアセトアルデヒドに暴露されることになり、食道扁平上皮がんのリスクが上昇します(図10・11)。また、DD型の人はお酒を飲んでも強くなることはありません。DD型の人にお酒を強要するのはやめましょう。
血液検査の血算(白血球数・赤血球数・血小板数など)に「MCV」という項目が入っている場合があります。MCVとは簡単にいうと「赤血球の大きさ」を示しており、MCVが高い場合赤血球の大きさが大きく「大赤血球症」といいます。大赤血球症では、通常ビタミンB12や葉酸の欠乏時に骨髄機能の低下によりMCVが高くなり貧血となる場合がありますが、アルコールの常習によっても高くなることがありその多くは貧血には至りません(アルコールを飲まない場合は関係ありません!)。アルコールはエタノールという物質で分子量は46で二酸化炭素(分子量は44)とほぼ同じであり、容易に赤血球膜を通過し、赤血球の膜コレステロール含量を増やしたり、細胞の膜構造や代謝活性に影響を与えることでその安定性を障害するため赤血球が大きくなります。エタノールの代謝産物であるアセトアルデヒドが大酒家の赤血球内部に高濃度で存在することが知られており、常習飲酒者のMCV増大は食道扁平上皮がんの危険因子となります(図12)。
上部消化管内視鏡検査で食道粘膜に褐色調のメラニン色素が沈着している場合があります。これは「食道メラノーシス」といい、高飲酒歴とくにアルデヒド脱水素酵素2のヘテロ欠損者に多くみられ、食道メラノーシスを有する方は食道扁平上皮がんの発生に注意が必要で、飲酒を控えることが望ましいです(図13)。
厚生労働省「健康日本21」では「節度ある適度な飲酒量」として「通常のアルコール代謝機能を有する日本人においては、節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで20g程度である」としています。純アルコール量の計算式は
純アルコール量(g) = お酒の量(ml)×アルコール度数/100×0.8(アルコール比重)
で求まります。例えば5%のビールであれば500mlで20gとなります(図14)。
焼酎やウイスキーやブランデーなどは度数が高いため、目分量で飲むと飲みすぎになる可能性が高くなります。その目安として、40度のお酒なら原液量してヤクルト(65ml)1本分、25度なら原液量としてヤクルト(100ml)またはリポビタンD(100ml)1本分、20度ら原液量としてオロナミンC(120ml)1本分が純アルコール20gに相当します。一度飲んでいる量を確認しましょう(図15)。
食道がんは進行すると非常に大きな手術が必要になります。内視鏡的に治療可能な早期食道がんはバリウム胃透視検査では発見が困難です。食道扁平上皮がんのハイリスクの方は内視鏡検診を受けましょう。
ピロリ除菌後胃がん
2011年度から2021年度の当センターにおける上部消化管内視鏡検診による胃がん発見数は毎年20例程度です(図1)。
令和2年度(2020年度)に当センターで発見された胃がん件数は、コロナ禍で年間内視鏡件数が約700件減少したにもかかわらず27例(発見率0.59%)でした。年代別では70代以上が多く、性別では男性が女性の2倍以上でした。70代の発見率は1.1%、80代の発見率は2.0%ですので、70代は100人に1人、80代は50人に1人見つかったことになります(図2)。
令和2年度に発見された胃がんの特徴として、ピロリ菌現感染が7例、既感染(除菌後)が17例、未感染が3例でした。慢性胃炎で除菌が適用となった2013年度の胃がんは現感染に多くみられましたが、既感染の胃がんが増えています。またピロリ未感染胃がんは市検診では2017年度に1例ありましたが、センターでは令和2年度に初めて3例見つかりました(図3)。
除菌後胃がん17例を、除菌してから胃がんが発見されるまでの期間と萎縮度の関係をみてみると、全例open typeの萎縮で、76%が除菌後10年以内に見つかっており、特に5年以内に多いことがわかります。また、除菌後10年以降に見つかった例が4例あり、そのうち3例が80代でした。除菌時にすでに高度萎縮が指摘された方は特に内視鏡検診を続けることが大切であると考えられます。また、加齢自体ががん発症リスクとなるため、80代になっても内視鏡検診を続けることが望ましいと考えられます(図4)。
当健康管理センターでは、新型コロナウイルス感染防止対策を講じ呼吸機能検査を実施しておりましたが、全国的に新規感染者が増加しているため、令和4年1月26日よりしばらくの間、呼吸機能検査を中止することを決定致しました。
再開時期につきましては、新規感染者数や政府の対応等を勘案し、決まり次第ご連絡させていただきます。
尚、ご不明な点がございましたら、滑川健康管理センターまでご連絡下さい。
滑川健康管理センター
お問い合わせ先:076-475-2254
昨年は、新型コロナウイルス感染症に終始した年でしたが、一方で健診を定期的に受けることの重要性を再確認した年でもありました。
今年もウイズコロナの年になりそうですが、当センターは時代の変化に適応しながらも、健診本来の目的である病気の早期発見にとどまることなく、受診者様の健康寿命を延伸するための健診を目指し、今年も頑張っていきたいと思います。
今年に入ってオミクロン株の感染が日本国内でも拡大しはじめており、これからも新型コロナウイルス感染症に注意が必要ですが、皆様には健康に留意され、健やかな年になりますよう祈願しております。
滑川健康管理センター 所長
山本正和
FIB-4 indexの健診結果項目追加について
(健康診断で脂肪肝と言われたら)
2020年に日本消化器病学会と日本肝臓学会が合同で飲酒に関係のない脂肪肝に関するガイドライン(NAFLD/NASH診療ガイドライン2020)を発表しました。今回、これを参考に脂肪肝について解説し、来年から健康管理センターで導入するFIB-4 indexについて説明します。
<脂肪肝は怖い?>
以前、肝機能異常の人に飲酒歴などがない場合、「脂肪肝だからあまり心配はいりません」と話していた時代がありました。脂肪肝は、血液検査に加え、腹部超音波やCTスキャン検査などで診断しますが、アルコールと関係ない脂肪肝は、進行しないものと考えられていました。しかし、近年、飲酒と関係がない脂肪肝の中に病気が悪化し、肝硬変そして肝がんを発症するものがあることが分かりました。
<肝硬変・肝がんに進展する脂肪肝とは?>
脂肪肝は、肝臓に中性脂肪がたまった状態のことを言います。脂肪肝の中では飲酒によるアルコール性脂肪肝がよく知られていますが、アルコールとは関係のない非アルコール性脂肪性肝疾患 (NAFLD・ナッフルド)の存在が注目されています。NAFLDは、非アルコール性脂肪肝(NAFL・ナッフル)と非アルコール性脂肪肝炎 (NASH・ナッシュ)の2種類に分類されますが、NAFLは、ほとんど悪化せず良好な経過をたどります(以前の単純性脂肪肝)。一方、NASHは、進行性で肝硬変・肝がんになる可能性があることが明らかになりました。このように今まではアルコールに関係ない脂肪肝は、予後(病気の医学的な経過の見通し)が良好と考えられていましたが、肝硬変・肝がんになるものもあることが分かり、問題になっています。
<NAFLD/ NASHにかかっている人の割合、肝がんの発症は?>
わが国では、2009~2010年の調査でNAFLDの有病率(かかっている人の割合)は、29.7%(実に国民の約3人に一人が罹患)と推定され、大変多くの方がかかっており、増加傾向にある病気であることが判明しました(NASHについての調査はありませんが、NAFLDに平行して、増加しているものと予想されています)。NAFLDから肝がんになる率(肝発がん率)は、低率で1年間で1,000人あたり0.44人(0.44/1,000人・年)とされています。一方、NASHの肝発がん率は、1年間で1,000人あたり5.29人(5.29/1,000人・年)と考えられ、今までの脂肪肝のイメージとはかけ離れて高い値です。
<肝臓の線維化が重要! 線維化の指標としてのFIB-4 index>
NAFLD/NASH発病の最も重要な原因は肥満ですが、NAFLD/NASHの予後は、肝臓の線維化(硬くなること)に最も影響を受けます。そのため線維化の程度を正確に診断することが大切です。
肝臓の線維化を評価する方法として注目されているのが、FIB-4 indexなどのスコアリングシステム(いろいろな検査値などによる点数化)です。FIB-4 indexは、通常の健診項目を用いて算出するため特別の検査を追加する必要がありません。また肝臓の線維化が進んだ人を診断する能力(診断能)が高いと考えられています。
<FIB-4 indexが健診結果項目に追加されます>
NAFLD(ナッフルド)、NAFL(ナッフル)、NASH(ナッシュ)と似たアルファベットが出て、分かりにくいでしょうか?
いずれにしてもアルコールに関係ない脂肪肝の中には、悪化し、肝硬変・肝がんに進むものがあることを理解してください。
来年から滑川健康管理センターでは、FIB-4 indexを健診結果項目に追加し、腹部超音波検査で脂肪肝と判定された方に肝線維化のリスク評価をする予定です。この指標により少しでも肝硬変・肝がんの発症予防に寄与できれば幸いであると思っています。