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厚生連滑川病院

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滑川健康管理センター

新着情報

「もの忘れ健診」のご案内

前回、ホームページで認知症について解説しました。要約すると以下の通りです。①現在、多くの人が認知症に罹患しており、今後も増えることが予想されている。②健常から軽度認知障害(MCI)を経て認知症へ進む。③MCIは、認知症の前段階だが、健常に回復する人もいる。④認知症を予防するためにはMCIの状態を早期に診断し、健常に回復できるように対処することが重要である。

上記のようなことから厚生連滑川健康管理センターでは、主に軽度認知障害(MCI)の方を早期に発見し、状態を改善していただくために「もの忘れ健診」を今年4月から実施することにしました。

「もの忘れ健診」で異常が認められれば専門医による診察が必要です。MCIの診断には、医師がいろいろ質問し、正しく答えられるかを診るだけではなく、回答の内容や反応などを含めて診断しますが、「もの忘れ健診」自体は、約10分程度の質問に答えるだけのもので負担の少ない健診です。

どのような病気でも早期発見が大切です。MCIと診断された人のうち、1年で5~15%の方が認知症に移行するが、1年で16~41%の方が健常に回復することも報告されています。MCIの状態を早期に発見し、適切に対処することで認知症になることを防げる可能性があります。

「もの忘れが気になってきた」「料理の手順が分からなくなってきた」「最近、仕事の失敗が多くなってきた」など少しでも認知症が心配になってきた方は気軽に「もの忘れ健診」を受けられることをお勧めします。この「もの忘れ健診」が軽度認知障害(MCI)や認知症を早期発見し、認知症の発症・重症化を防ぐ契機になればいいと考えています。

 

参照:
内閣府「平成29年度版高齢社会白書」
認知症疾患診療ガイドライン2017

 

厚生連滑川健康管理センター
山本正和

認知症について

昨年6月に認知症基本法が成立し、令和6年1月1日から施行されました。

認知症は、高齢化が進む我が国では、喫緊の課題です。「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計では、65歳以上の認知症患者数は2020年に約602万人、2025年には約675万人と5.4人に1人程度(有病率18.5%)が認知症になると予想されています(図1)。また認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)も約20%罹患していると報告されています。

 

(図1)

 

厚生労働省によれば認知症とは、「いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(およそ6ヵ月以上継続)を指します」としています。認知症は病名ではなく、そのような状態を言い、日常や社会生活に支障がない場合は認知症と診断されません。

認知症は、健常からMCIを経て認知症に移行します。MCIは認知症ではありませんが、認知症直前の状態です。図2に示すように年5~15%の方がMCIの状態から認知症に移行します。一方、健常に回復する方も年16~41%いると考えられています。しかしアルツハイマー病などで認知症の状態になってしまった場合、根本的にはMCIへ戻ることは現在の医療では困難であると考えられています。MCIから認知症に進まないようにするため種々の試みがなされており、MCIの状態を早期に診断し、健常に回復できるように対処することが重要です。

 

 

(図2)

 

参照:

内閣府「平成29年度版高齢社会白書」

認知症疾患診療ガイドライン2017

 

厚生連滑川健康管理センター

山本正和

令和6年新春のご挨拶

 新年のご挨拶を申し上げます。

 今年は、元日から富山県に震度5強の地震が、2日には羽田で航空事故が発生し、波乱の幕開けになりました。

 振り返れば昨年は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行しましたが、インフルエンザが夏に流行り、過ごしやすいはずの秋が短かったなど異常が続いていると感じる1年でした。一方、注目すべきこととして6月に認知症基本法が成立し、日本における認知症に対する施策の理念が示されました。

 認知症基本法成立を受けて当センターでは、4月から新しくオプション検査として認知症(物忘れ)健診を追加します。認知症は、高齢化が進む我が国では、喫緊の課題です。実際、65歳以上の方では認知症は約20%、その前段階である軽度認知障害(MCI)も約20%罹患しており、さらにMCIから年5~15%の方が認知症に移行すると報告されています。そのため認知症(物忘れ)健診によってMCIと認知症を早期発見し、認知症の発症・重症化を防ぐ契機になればいいと考えています。また滑川健康管理センターは独自の理念・基本方針・受診者さまの権利・受診者さまの責務を決める予定です。これによりセンターは、目標が明確化され、スタッフが高い志を持ち続けることでより次元の高い社会貢献をできるのではないかと思います。

 以上のような新しい試みにより当センターの活動が改善され、皆様の健康維持・増進にさらに寄与できるようスタッフ全員で努力してまいりますので、今年もよろしくお願いいたします。

 

厚生連滑川健康管理センター所長
山本正和

BNP検査判定基準の変更について

第27回日本心不全学会学術集会(会期:2023年10月6~8日)で「血中BNPNT-proBNP値を用いた心不全診療の留意点について」の改訂版が公表され、心不全の診断や循環器専門医への紹介基準となるBNPの値が一部変更されました。それに伴い、11月1日から当センターのBNP検査の判定基準値とコメントを変更しておりますのでご留意ください。

 

 

参照:日本心不全学会

「血中BNPNT-proBNP値を用いた心不全診療に関するステートメント 2023改訂版」

呼吸機能検査の再開について

 滑川健康管理センターにおいて、新型コロナウイルス感染予防のため中止しておりました呼吸機能検査を、令和5年5月8日より再開させて頂きます。

 尚、今後も新型コロナウイルス感染症状況、それに伴う政府発表、各自治体の対応等により、再度健診の一部検査を中止することも考えられます。その際には再度ご連絡させて頂きますので、何卒、ご理解ご協力のほどよろしくお願い致します。

 

 

滑川健康管理センター

お問い合わせ先:076-475-2254

令和5年新春のご挨拶

令和5年も新型コロナウイルス感染症が蔓延する中、新年が明けました。

昨年を振り返るとロシアのウクライナ侵攻が起き、日本も大きな影響を受けました。当センターでは、新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、健診控えが続いています。そのため病気の発見が遅れることを危惧しています。昨年、新しい試みとしてFIB-4 indexを採用しました。この指標は、検査を追加することなく算出するものであり、2020年の日本肝臓学会のガイドラインに記載されたものです。このような新しい試みを今後も行っていきたいと思います。また異常ヘモグロビンの症例を2例経験しました。糖尿病の診断・治療に欠かせないHbA1cの結果に影響することからその実態を検討していきたいと考えています。

新型コロナウイルスの「第8波」では、インフルエンザとの同時流行が懸念されています。今年もこれらの感染症に対処しつつ健診を円滑に進めていきたいと思っていますので、皆様にはご協力のほどよろしくお願いいたします。

 

滑川健康管理センター 所長

山本正和

食道がん(第1回)

食道がん(第1回)

「がんの統計21」によると、 2017年に食道がんになった人(罹患数)は、男性21,145人、女性4,338人の計25,483人でした(図1)。

図1

 

また、食道がんで亡くなった人は、男性9,571人、女性2,048人で計11,619人でした(図2)。

図2

 

食道がんの年齢階級別罹患率では, 60代~70代がピークで、男性に多いという結果でした(図3)。

図3

 

食道がんの組織型をみると、わが国では「食道扁平上皮がん」が約90、次いで「食道腺がん(バレット食道腺がん)」が約4です。米国では1990年後半に食道腺がんが食道扁平上皮がんを抜いて最も多くなっています。「喫煙」はどちらのがんでも危険因子となりますが、食道扁平上皮がんでは「飲酒(特にアセトアルデヒドへの暴露)」が、腺がんでは「Barrett(バレット)食道」が危険因子として特に重要です(図4)。

図4

 

 

食道扁平上皮がんの危険因子

飲酒とアセトアルデヒドへの暴露

アルコールは主に「アルコール脱水素酵素(ADHB1」によってまず「アセトアルデヒド」という物質に分解されます(ほかにも「ミクロソーム・エタノール酸化系(MEOS)や「カタラーゼ酸化酵素系」なども分解しますがメインはアルコール脱水素酵素です)。

アセトアルデヒドは主に「2型アルデヒド脱水素酵素(ALHD2」によって酢酸へ分解され、最終的に炭酸ガスと水になります(こちらもほかに「1型アルデヒド脱水素酵素(ALDH

1)」も分解しますがメインは2型アルデヒド脱水素酵素です)(図5)。

図5

 

アセトアルデヒドには強い毒性があり、二日酔いの原因物質で、動物実験では発がん性が証明されています。アセトアルデヒドによって「顔が赤くなる」、「吐き気がする」、「動悸がする」、「眠くなる」などの症状(「フラッシング反応」といいます)が出現します。また、口腔内や消化管内は、常在細菌によりエタノール(アルコール)から高濃度のアセトアルデヒドが作られるため、特に高濃度のアセトアルデヒドに暴露されます。お酒を飲むと顔が赤くなる人は「フラッシャー」といい食道扁平上皮がんのハイリスクです(図6)。

図6

 

お酒に強いか弱いかは2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)が活性型か否かで決まります。ヒトのALDH2は517個のアミノ酸が連なったタンパク質で、このうち487番目のアミノ酸がグルタミン酸であるものは「N型」といいアセトアルデヒドを分解できますが、リシンであるものは「D型」といいアセトアルデヒドを分解できません。どちらの酵素を生成するかは遺伝によって決まっています。遺伝子は両親から1つづつ受け継ぎますので両親の持っている遺伝子型によって「NN」「ND」「DD」が存在することになります。NN型」は「活性型」でお酒に強いタイプND型」は「ヘテロ欠損型」といい「低活性型」でお酒に弱いタイプ、「DD型」は「非活性型」で全くお酒が飲めないタイプ(いわゆる下戸)です。理論上ND型の活性はNN型の1/16(約6%)と言われています(図7)。

図7

 

フラッシャーかどうかは遺伝子を調べなくても、図8に示した質問紙法である程度わかります。当センターの内視鏡問診票には喫煙や飲酒についての項目があります。食道がんのリスクを把握するためですのでなるべく正確にお答えください。

図8

 

ただし、アルコール脱水素酵素(ADH1)が低活性の場合はアルコールの分解が遅れるため、アルデヒド脱水素酵素ALDH2ヘテロ欠損の人でも顔が赤くならない場合があり注意が必要です(図9)。

図9

 

ND型の人でもお酒を飲み続けるとだんだん強くなります(アルコール耐性)が何故でしょう?これには図5で示した「ミクロソーム・エタノール酵素系(MEOS」が関与しています。MEOSはシトクロムP450というミクロソーム系酵素と言われ、通常睡眠剤や精神安定剤などの薬物代謝を行っていますが、大量飲酒によってアルコールの血中濃度が高くなると、アルコール脱水素酵素(ADHB1)に加勢するような形でアルコール代謝をするようになります。ADHB1は慢性飲酒によって増えることはありませんが、MEOSは長期の大量飲酒によって増えるため、アルコールの耐性が高まるのです。ALDH2ヘテロ欠損の人は、アルコール摂取量が増えるとこのアルコール耐性によってアルコールの分解は進みますが、アセトアルデヒドの分解は変わらないため、よりアセトアルデヒドに暴露されることになり、食道扁平上皮がんのリスクが上昇します(図10・11)。また、DD型の人はお酒を飲んでも強くなることはありません。DD型の人にお酒を強要するのはやめましょう。

 

図10

図11

 

血液検査の血算(白血球数・赤血球数・血小板数など)に「MCV」という項目が入っている場合があります。MCVとは簡単にいうと「赤血球の大きさ」を示しており、MCVが高い場合赤血球の大きさが大きく「大赤血球症」といいます。大赤血球症では、通常ビタミンB12や葉酸の欠乏時に骨髄機能の低下によりMCVが高くなり貧血となる場合がありますが、アルコールの常習によっても高くなることがありその多くは貧血には至りません(アルコールを飲まない場合は関係ありません!)。アルコールはエタノールという物質で分子量は46で二酸化炭素(分子量は44)とほぼ同じであり、容易に赤血球膜を通過し、赤血球の膜コレステロール含量を増やしたり、細胞の膜構造や代謝活性に影響を与えることでその安定性を障害するため赤血球が大きくなります。エタノールの代謝産物であるアセトアルデヒドが大酒家の赤血球内部に高濃度で存在することが知られており、常習飲酒者のMCV増大は食道扁平上皮がんの危険因子となります(図12)。

図12

 

上部消化管内視鏡検査で食道粘膜に褐色調のメラニン色素が沈着している場合があります。これは「食道メラノーシス」といい、高飲酒歴とくにアルデヒド脱水素酵素2のヘテロ欠損者に多くみられ、食道メラノーシスを有する方は食道扁平上皮がんの発生に注意が必要で、飲酒を控えることが望ましいです(図13)。

図13

 

厚生労働省「健康日本21」では「節度ある適度な飲酒量」として「通常のアルコール代謝機能を有する日本人においては、節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで20g程度である」としています。純アルコール量の計算式は

純アルコール量(g) = お酒の量(ml)×アルコール度数/100×0.8(アルコール比重)

で求まります。例えば5%のビールであれば500mlで20gとなります(図14)。

図14

 

焼酎やウイスキーやブランデーなどは度数が高いため、目分量で飲むと飲みすぎになる可能性が高くなります。その目安として、40度のお酒なら原液量してヤクルト(65ml)1本分、25度なら原液量としてヤクルト(100ml)またはリポビタンD(100ml)1本分、20度ら原液量としてオロナミンC(120ml)1本分が純アルコール20gに相当します。一度飲んでいる量を確認しましょう(図15)。

図15

 

食道がんは進行すると非常に大きな手術が必要になります。内視鏡的に治療可能な早期食道がんはバリウム胃透視検査では発見が困難です。食道扁平上皮がんのハイリスクの方は内視鏡検診を受けましょう。

ピロリ菌のおはなし 第3回「除菌後胃がん」

ピロリ除菌後胃がん

2011年度から2021年度の当センターにおける上部消化管内視鏡検診による胃がん発見数は毎年20例程度です(図1)。

 

図1

 

令和2年度(2020年度)に当センターで発見された胃がん件数は、コロナ禍で年間内視鏡件数が約700件減少したにもかかわらず27例(発見率0.59%)でした。年代別では70代以上が多く、性別では男性が女性の2倍以上でした。70代の発見率は1.1%、80代の発見率は2.0%ですので、70代は100人に1人、80代は50人に1人見つかったことになります(図2)。

 

図2

 

令和2年度に発見された胃がんの特徴として、ピロリ菌現感染が7例、既感染(除菌後)が17例、未感染が3例でした。慢性胃炎で除菌が適用となった2013年度の胃がんは現感染に多くみられましたが、既感染の胃がんが増えています。またピロリ未感染胃がんは市検診では2017年度に1例ありましたが、センターでは令和2年度に初めて3例見つかりました(図3)。

 

図3

 

除菌後胃がん17例を、除菌してから胃がんが発見されるまでの期間と萎縮度の関係をみてみると、全例open typeの萎縮で、76%が除菌後10年以内に見つかっており、特に5年以内に多いことがわかります。また、除菌後10年以降に見つかった例が4例あり、そのうち3例が80代でした。除菌時にすでに高度萎縮が指摘された方は特に内視鏡検診を続けることが大切であると考えられます。また、加齢自体ががん発症リスクとなるため、80代になっても内視鏡検診を続けることが望ましいと考えられます(図4)。

 

図4

健診のお申し込み、詳細については下記までお問い合わせ下さい。
厚生連滑川健康管理センター(お問い合わせ時間 13:00〜17:00)
TEL.076-475-2254   FAX.076-475-2395